はじめに
植物の楽しみかたにはいろいろありますが、種子や苗木から自分で育てて楽しむ人もたくさんいます。 果樹栽培は専門業者の分野と思われがちですが、”育てる楽しみが目的”ならば、けっして難しいものではありません。種類にもよりますが、野菜づくり よりやさしいものが、少なくありません。 自分の住まいは都市部で狭い庭、高層住宅だから果樹は育てられない、と思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、あきらめないでください。狭い庭では小柄に育てる、高層住宅のベランダでは鉢植えにするなど、場所にあったそれなりの楽しみ方があるのです。さらに暖房が完備していれば、従来育てられなかった熱帯性の種類も、育てられるようになります。 また、果樹には花が美しいものが少なくありませんから、花の時期には花も楽しむことができます。果樹栽培を楽しむ基礎知識
■家庭菜園を楽しむ
■花木と果樹 花の観賞を目的とするのが花木で、果実を目的に育てるのが果樹です。しかし、果樹の中には、家僕に負けないくらい花が美しい樹木が少なくありません。 リンゴやモモ、アンズ、ナシ、ザクロ、アケビなどは花の美しさに定評があり、花を観賞してから果実を収穫する楽しみが待っています。花を楽しむだけの花木なら、木を弱らせないために花後、枝を切って結実させない場合もありますが、果樹は結実させて良果を収穫するのが目的ですから、木を弱らせないで良果を得るためのバランスが大切になります。そのためには、摘果という作業が必要になります。
果樹の多くは結実しても、幼果のうちの生理落果でかなり脱落します。しかし、良果を得るためには、生理落果だけではまだまだ不足なので、人工的な摘果が必要になります。残す果実数は、果樹の性質などによっても違いますが、ひとつの目安は、一果あたりの葉数で見積もりができます。大果ほど葉の枚数が多く必要で、ハッサクやナツミカンなどになると、高さ2.5〜3mの庭植えでも、10〜15果しか収穫できません。リンゴで30〜40果、サクランボなどの小果なら100果以上収穫できます。 一般の店頭に並ぶ果実の多くは、とくに日持ちがよいものを除き、早どりして店頭に並ぶ時期に熟すように収穫してます。果実の中には木なりで熟したほうが美味なものもあるので、家庭果樹では楽しみ方がさらに大きくなります。袋かけなど作業が多い果樹もありますが、収穫を楽しみに行いましょう。
■せん定の基本
■間引きせん定悪い枝を放置しておくと、正常な枝の栄養をとって生育をさまたげます。さらに内部までの日当たりや風通しに悪い影響を与え、病虫害発生の原因にもなります。これらの不要枝は早めに元から切って、正常な枝葉や果実の生育を助けます。枯れ葉も害虫の巣になるので、枯れ枝も切り取ります。
■切りつめせん定樹形をつくるときに多用するせん定です。放置すると幹が長く伸びてから枝が出るので、新梢の先を切りつめ、低い位置から枝を出させて出枝や側枝に育て、小柄な樹形をつくります。多くは3〜4年まで切りつめせん定で樹形をつくり、芯を止めて樹形ができたら、間引きせん定を主にして、古木を更新しながら樹形を保ちます。
@徒長枝:主幹や主枝から勢いよく伸びる枝で、正常な枝の養分を取り樹形を乱します。
A交差枝:主枝などと交差して、後から発生した枝で、込み合う原因となります。
B平行枝:主枝などに平行する枝で、栄養のバランスや樹形を乱し、こみ枝になります。
Cふところ枝:内部に発生する小枝で、細枝を密生し、込み合う原因になります。
D逆さ枝:逆方向に伸びる枝で、樹形を乱し、込み合う原因になります。
E下がり枝:下向きに飛び出してくる細枝で、樹形を乱し病害虫を誘発しやすくします。
F車枝:1ヵ所から数本の細枝を発生させ、樹形を乱し、込み合う原因になります。
G胴吹き枝・ヒコバエ:根元や幹の途中から発生する枝で、養分をうばいます。
■家庭で育てやすい人気果樹
■扱いやすい果樹スグリやフサスグリなどは、低木で適応力が強く、全国どこでも育てられ、病害虫にも強い、扱いやすい果樹です。低木では他にボケやキンカン、グミ、ブルーベリー、ユスラウメなどがあります。
■味覚が楽しみな果樹つるものではアケビ、サルナシ、ブドウ、キウイなどがあります。つるを支える設備が必要ですが、一度設備すれば数年はそのまま使えます。組立や解体が手軽にできるパイプ棚が市販されているので、利用することもできます。 カキ、クリ、ヤマモモ、ザクロ、リンゴ、キイチゴなどは、古くから味がよい果物とされてきましたが、品種改良が進み、さらにあじがよくなっているので、チャレンジしてみる価値があります。
■柑橘類栽培のポイント
■日当たりと温度生産地へ行くと、山の斜面にミカン畑が広がっているのをよく見かけます。遠くからでもミカンの実が日にあたり、黄色く光っているのがわかります。ミカン類は枝葉の内部までよく日がことが大切で、日当たりがよい山の斜面は陰が少なく、よい栽培地といえます。庭植えでも陰を作るような枝は整理して、できるだけ内部まで日が入るようにします。 生育適温は年間平均気温が15℃以上で、最低気温がマイナス5℃以下にならないことです。南関東から南の暖地が適地になるので、それ以外の地方は鉢植えにして、冬は室内に入れて管理します。 ミカン類の多くは、枝が立ち上がる傾向があります。立ち枝になると内部まで日が入りにくくなり、収穫もしにくくなります。そこで枝を横に倒すように誘引して、枝全体によく日があたるようにします。 枝の柔らかい生育期に誘引して、主枝や側枝をつくります。 ミカン類は常緑樹で、一年中肥料を吸収しているので、肥料切れにならないように注意します。2〜3月に配合肥料を200〜300g根回りに溝を掘って埋めたり、ばらまいて軽くすき込んだりします。年1回では肥料切れを起こすので、秋にもう一度、半量を追肥してやります。
■人気熱帯果樹栽培のポイント
以前は熱帯性の果実というと、バナナくらいしか見られませんでした。バナナは青いうちに収穫して追熟されるので、ある程度輸送期間がかかっても、商品価値を維持できたからです。しかし、その後空輸が一般的になり、輸送時間が大幅に短縮されるようになると、多くの熱帯性果実が店頭に並ぶようになりました。 そうなると、これらの果樹を育ててみたいという人も出てきます。大規模な温室設備を設置し、熱帯果樹園がつくられました。さらに、熱帯性果実が一般に普及すると、一般家庭でも、これらを育てられないかという欲求が生まれ、関係者の努力もあって、いくつかの品種の鉢植えが可能になりました。本来が常夏の地方の果樹ですから、冬の管理が難しくなりますが、家庭の密閉性や暖房設備の大幅な進歩などにより、多くの一般家庭でも、熱帯性の果実が楽しめるようになりつつあります。 多くの熱帯性果樹の生育適温は25℃〜30℃で、夏の温度管理は難しくありませんが、冬の管理が問題です。最低生育適温が高く、品種によっては15℃〜20℃が必要です。休眠して5℃くらいを耐えるものもありますが、枯れてしまうものもあります。 熱帯果樹の栽培のポイントは、いかに弱らせないで越冬させるかです。本来周年活動している果樹ですから、その状態にできるだけ近づけます。
果樹酒の作り方
■範囲が広い
果実は、生食で利用すると思われがちですが、果実酒になるものを含めると、ぐっと範囲が広がります。中には古くから薬効が知られているものも、少なくありません。渋みやくせがあったりして生食できないものも、果実酒にすると独特の風味を持つ美酒に変わります。アカモノ、ウコギ、エノキ、オリーブ、カナメモチ、ガマズミ、ガンコウラン、クコ、クチナシ、コムラサキ、ザリコミ、サンザシ、シャリンバイ、ナナカマド、ナンテン、ニワトコ、ネズミモチ、ハナミズキなど、身近な樹木の中にも果実酒で楽しめるものは多くあります。
■果樹酒作りの基本
果実酒は、ベースになる原酒と果実、甘味料の三種でなりたっています。
■原酒アルコール分が強いほど、果実の成分浸出がよくなります。また、果実の風味や特色をそこなわないように無味、無臭、無色のものが最善です。この条件に合うのは市販のホワイトリカー(焼酎)で三五度のものがもっとも多く使用されています。
■果実果実は若い物ほど酸味が強く、熟した物ほど香気が強いのが普通で、熟し具合によって、できる果実酒の味や香気に違いが出ることを知っておくことが大切です。十分水洗いして汚れをとり、一粒ずつ水気を丁寧にふき取って使いますが、果実によっては一晩水につけて、あく抜きする必要がある場合もあります。
■甘味料砂糖は、純度が高いものほど果実の風味を損なわないので、氷砂糖が一般には多く使われますが、これでなくてはならない、というものではありません。糖尿病には砂糖が禁じられているので、健康上から蜂蜜を甘味料に使う方法もあります。
■容器と置き場所材料を入れやすい広口で酒精分が発散しないように密閉できるものです。ラベルを貼り、作った年月日と果実名を記入しておきます。 直射日光が当たらず温度差が少ない冷暗所に保存します。
■実際の作り方
■梅酒もっとも一般的で、果実酒の基本になるのが梅酒です。いろいろな作り方がありますが、ここでは一般的な方法を紹介します。 青ウメ・・・・・・・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・500グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 傷のないものを選び、水洗いしたら完全に水気をふきとります。容器にウメと砂糖を入れ、静かに原酒を注ぎ入れて密封します。3ヶ月から飲用できますが、1年待つと風味がよくなります。ウメは1年で取り出します。
■アンズ酒アンズ ・・・・・・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・250グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 3ヶ月から飲用できますが、6ヶ月以上熟成させるほうが、味も香りもよくなります。
■アケビ酒アケビ・・・・・・・・・・300グラム 砂糖 ・・・・・・・・・・70グラム 原酒 ・・・・・・・・・・720ミリリットル 果実を割って、果肉を全部入れ、果皮は1個分だけを入れます。3ヶ月で果肉と果皮を取り出します。
■スモモ酒スモモ・・・・・・・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・250グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 6ヶ月でスモモを取り出します。
■カリン酒カリン ・・・・・・・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・200グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 6ヶ月でカリンを取り出しますが、取り出した果肉は砂糖で煮詰めて咳止めの薬にします。
■グミ酒秋グミ ・・・・・・・・・・500グラム 砂糖 ・・・・・・・・・・100グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1リットル 秋グミは6ヶ月で取り出しますが、完全熟成には1年以上かかります。
■サクランボ酒サクランボ・・・・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・200グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 6ヶ月でサクランボを取り出します。
■ビワ酒ビワ ・・・・・・・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・200グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 6ヶ月でビワを取り出します。
■マタタビ酒マタタビ ・・・・・・・・300グラム 砂糖 ・・・・・・・・・・300グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 3ヶ月でマタタビを取り出します。糖分を加えずに作り、カクテルのビター(苦味剤)に利用する方法もあります。
■ミカン酒ミカン ・・・・・・・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・300グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 果皮ごと輪切りにして入れます。長く入れておくと苦味が出るので1ヶ月で中身を出し、さらに1ヶ月熟成させます。他のミカン類も同じ要領で作ることができます。
■パイナップル酒パイナップル ・・・・1キログラム 砂糖 ・・・・・・・・・・200グラム 原酒 ・・・・・・・・・・1.8リットル 果皮の近くにビタミンCが多いので、半分は皮付きのまま入れます。3ヶ月で熟成しますが果実は果実は入れたままで構いません。

